歴史を描くのではなく、歴史と一緒に作品を作る

ビザンツ帝国を描く意気込みと葛藤

 

ビザンツ帝国編2:”漫画の表現”としてビザンツ帝国を描く

佐藤双葉氏 作成

Author:佐藤 双葉 (From:『西洋中世文化事典』を楽しむ!!)

 

 2021年の暮れから2025年半ばまでの4年弱の間、ビザンツ帝国を舞台にした漫画『アンナ・コムネナ』(星海社)を連載し、アンナの少女時代から死までの物語を描いておりました。

 

西洋古代~中世を通して

唯一の女性歴史家とされるアンナ・コムネナ

 

 アンナは様々な学問分野に通じ、人生の終わりに「ビザンツ歴史文学最高傑作」ともいわれる名高い歴史書を書き上げた不世出の才人ですが、この大仕事を成し遂げる前の人生もなかなかドラマティックな人で、どうやら権力の座に就き政治家として活動したかったらしく、自分の弟―つまり皇帝ヨハネス2世コムネノス(1087-1143;在位1118-43)と権力争いをしたらしいことが分かっています。

 

 アンナの文章のきらめき、古典古代の豊かな引用とそのイメージの使い方の見事さ、驚くほどの空間把握能力、そして構成の巧みさに、私はすっかり心を奪われ、また、歴史書の全編を通じて雄弁に訴えかけてくる「アンナその人」の力強い魅力にノックアウトされました。

 

 これまで古代ギリシアからの伝統により「男の世界」であった歴史学に乗り出し、決して物怖じせず、まるで現場にいたかのような鮮やかさで戦場や戦況の描写をするアンナ。軍人皇帝である父が、勇敢であると同時に平和を愛する人であるということを巧みに強調するアンナ。父母への愛情を隠さず、時には亡夫のことを思い出して、涙を流しながら執筆するアンナ。当時随一の知識人で、輝くばかりの文章力を持ちながら、いつもどこか少女のようで、激しく憎み、激しく悲しみ、激しく愛するアンナ。

 

 そんな風にアンナに夢中になっていた折に漫画を描く機会を得たので、この雄弁で面白い皇女さまと「対話」をしながら物語を――漫画を作ってみよう、と思いました。が、軽い気持ち(?)で始めてみたところ、思わぬ困難の連続に見舞われることになります。

 

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佐藤双葉氏 作成

試行錯誤その1:服飾とキャラクターデザイン

 

 漫画は複数のコマを連続して提示することで、登場人物の状態や心情、状況の変化、物語の流れを感じてもらうメディアなので、連続して描くことが可能なデザインをする必要があります。

 

 『アンナ・コムネナ』を発表して、色々な方に「この作品は商業作品として発表された漫画としては、初めてビザンツ帝国を中心に描くものではないか」という風に言っていただきました。

 

 たしかに、ありとあらゆる時代地域を題材にしてきた豊かな日本の漫画文化を見渡してみても、ビザンツ帝国を中心に展開された作品はあまり思い浮かびません。オスマン帝国側からの視点でコンスタンティノープルの陥落(1453年)が描かれている作品はあります (本連載の「中世西洋学会書店」編でご寄稿予定の大西巷一先生の『乙女戦争外伝 II 火を継ぐ者たち』に大迫力で描かれています)。また、学習漫画において、コンスタンティノス1世の時代やユスティニアヌス1世といった初期の時代、そしてビザンツ最後の皇帝コンスタンティノス11世の時代(すなわちコンスタンティノープル陥落、ビザンツ帝国の滅亡)が描かれているものは見たことがありました。

 

 しかし、自分が取り組んでいるところの11~12世紀、中期のビザンツを描いた「漫画の表現」はなかなか見当たりません。つまり、漫画の表現としての蓄積、参考になるお手本が多くない、ということです。

 

 継続して、締め切りを守りながら、ひとりで描き続けられる(今のところ一人で作劇・作画をする体制です)「ビザンツ帝国らしい」、自分なりの絵のデザイン・絵の描き方を自分で考える必要がありました。

 

 キャラクターデザインについては、肖像が残っている人物に関してはそれらを参考にしましたが、残念なことにアンナの肖像は一切発見されていません。同時代人による彼女の容姿の描写が残っているため、それらを参考に、アンナ本人の文章からの印象を自由にイメージしました。

 

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USJ再建 ザ・リアル

鈴木大祐氏 作成

Author:鈴木 大祐(From:日本の未来を想う投資家の活動実録)

 

 USJ再建ストーリーには長い歴史とバックグラウンドがあります。僕自身もUSJ再建ストーリーの第一楽章にあたる部分の当事者の一人でしたので、その時の現場最前線での出来事も含め、USJは実際には誰が、どのようにして再建し、その後の成長を実現できたのかをご紹介をしたいと思います。

 

USJ再建の本当の起点は2005年

 

 2001年3月末オープンしたUSJですが、初年度の2002年3月期は目新しさで1,103万人もの来場者を記録しました。

 

 しかし、これが1年で一巡し、再来場が大きな課題となり、上記の不祥事も重なって急速な経営悪化に陥ったUSJでは、ハリウッドフレンドパス(HFP)と言う格安マニュアルパスを2003年の3月に発行。

 このHFPによって、来場者数は一気に20%以上伸びました。もし来場者数だけで語れるのであれば、このパスを導入した自分がUSJを立て直したよ、とアピールしたくなるかもしれません。

 

 しかしながら、現実には顧客の平均単価が30%も落ちてしまい、トップラインの売上高は前年割れをしてしまいました。もちろん利益も赤字体質から抜け出すことはできませんでした。あまりに急速に悪化するこの状況を見かねた米国ユニバーサル本社では、その打開策として以下のアクションをとりました。

 

1️⃣テーマパーク経営のプロであるグレン・ガンペル氏の招へい

 

2️⃣金融支援をふくめた経営再建について、GS(米国側)に資本注入と経営への参画を相談

 

 そして2005年の春、突然GS日本のTMTグループのヘッドのところに米国GSから電話がかかってきました。米国のユニバーサルグループから、日本のユニバーサルスタジオジャパンが大変なので何とかゴールドマンの方でサポートしてもらえないか?という相談、というか指示でした。

 

 その電話の直後に僕はMDに呼ばれて、彼の部屋に行きました。それが僕の人生を変えるほどの大きな分岐点になった瞬間でもありました。

 

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15兆円市場「フェムテック」に潜む三重苦

木村恵氏 作成

Author : 木村 恵(From:フェムテックや健康経営の社会情勢やビジネスモデル)

 

 2030年に15兆円規模が予測されるフェムテック市場。しかし、フェムテック創業者の76%が「保険加入の困難」という深刻な課題に直面しています。

 

フェムテック創業者の76%が直面する「保険の壁」

 

 ここでいう「保険」は、医療保険やがん保険などの生命保険ではなく、予期せぬ事故や問題が発生した場合に、関係者(被験者、患者、消費者など)への補償や、企業・医療機関の損害賠償責任をカバーする損害保険のこと。

 

 世界のフェムテック創業者を対象に行った調査では、76%が保険加入時に何らかの課題を感じたと回答。 「流せる生理用ナプキン」を開発したPlaneraの共同創業者で医師のオリビア氏は「私たちは歴史的なデータ不足を補うために自ら研究を行い、資金調達に苦労し、さらに保険料の割増分まで支払っている」と述べている。

 

 さらに「保険の壁」は、単なるコスト増や手続きの煩雑さにとどまらない。BMSグループの保険仲介人オリビア・ベリンガム氏は「適切な保険が見つからなければ、臨床試験は進められず、医薬品は承認されない。結果的に、患者が治療を受けられず不利益を被る。女性が利用できる選択肢を制限している」

 

 つまり、フェムテック市場の発展が、「保険」に加入できないことで、成長を拒まれるという事態が起きているのだ。

 

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